誰もが1度は観たことがある映画、サウンド・オブ・ミュージックを英語の学習にあてようと思います。
さて、今回は、トラップ大佐とシュレーダー男爵夫人の大人の関係にスポットを当てたいと思います。
この映画は、主にファミリー、子供たちを対象としており、あまり複雑な人間関係は描いていません。
従って、大佐と夫人の関係もわりとさらっと流している感じがあります。
しかし、このたび何回もリスニングをしてみて分かったのは、この2人の会話がその後の物語の展開の伏線となっていることです。特に、大佐のやや気難しく皮肉な性格と、大佐に惚れてはいるものの、どうやって彼の気を引いて結婚を申し込ませようかという、ある意味での策略を巡らしている夫人の駆け引きがこの場面で見られます。
この場面というのは、ウィーンから夫人と一緒に家に戻った後、トラップ邸から湖を望む庭園の前を2人が散策しながら会話するところです。
ここでの会話に日本語訳を付けてみました。
夫人 | This really is exciting for me, Georg…being here with you. | 本当にすてきだわ、ゲオルグ。貴方とここで一緒にいるなんて。 |
大佐 | Trees, lakes, mountains. When you’ve seen one, you’ve seen them all. | 木々に、湖に、山だよ。1度見ればみな同じさ。 |
夫人 | This is not what I mean and you know it. | 私が言いたいのはそういうんじゃないの。分かってるでしょ。 |
大佐 | Ah, you mean me? I am exciting. | というと、僕のことかい。自分は面白い男さ。 |
夫人 | Is that so impossible? | 難攻不落ってことかしら。 |
大佐 | No. Just, oh, highly improbable. | いや、単に、そう、ありそうもないね。 |
夫人 | There you go, running yourself down again. | また始まった。話を横道にそらすんだから。 |
大佐 | Well, I’m a dangerous driver. | そうさ、僕は運転が荒いからね。 |
さて、ここで1つ問題です。なぜ、大佐は、I’m a dangerous driver.(自分は危険な運転手だ)と言っているのでしょうか。
その理由は、
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はい、言いますよ。
それは、その前の夫人の発言、There you go, running yourself down again.(また始まった。話を横道にそらすんだから)の running yourself down という言葉にヒントがあります。
run down を夫人は、「人を中傷する、批判する」という意味で、つまりここでは、「自分を卑下する」というニュアンスを込めて言っているのですが、大佐はこれを「車で人をはねる」という別の意味に引っかけて、「そうだよ、自分は車の運転がらんぼうだからね、人をはねるのさ」と言っているのです。
さらに、勝ち気な夫人と皮肉屋の大佐のしゃれた会話が続きます。
夫人 | Could it be running away from memories? | 思い出から逃げられるっていうこと? |
大佐 | Mm-hmm. Or perhaps just searching for a reason to stay. | うーん、あるいはそこに居る理由を探しているとか。 |
夫人 | Oh, I hope that’s why you’ve been coming to Vienna so often. Or were there other distractions there? | あらそう。だからウィーンに足繁くいらっしゃるんだと思いたいわ。それとも他に気晴らしでもあるのかしら。 |
大佐 | Oh, I’d hardly call you a mere distraction, darling. | まさか、君のことを気晴らしなどと呼ぶわけにはいくまいよ。ダーリン |
夫人 | Well, what would you call me, Georg? | じゃあ、なんと呼んでくださるの、ゲオルグ。 |
大佐 | Mm… Lovely, charming, witty , graceful, the perfect hostess, and, uh, you’re going to hate me for this…in a way, my savior | ええと、愛らしい、魅力的、機知に富んだ、上品な完璧な女主人で、ああ、気を悪くするかもだけど、ある意味、私の救世主。 |
夫人 | Oh, how unromantic. | あらまぁ、なんとロマンチックでないこと。 |
大佐 | Well, I would be an ungrateful wretch if I didn’t tell you at least once that it was you who brought some meaning back into my life. | ええと、恩知らずな卑劣漢になりかねない。もしも、私の人生に意味があるともう一度思わせてくれたのが君だと伝えなかったとしたらね。 |
夫人 | Oh, I am amusing, I suppose. And I do have the finest couturier in Vienna and the most glittering circle of friends, and I do give some rather gay parties. | じゃあ、私は愉快な人間だと思うわ。ウィーンで一番のファッションデザイナーを抱えて、すごくきらびやかな人の輪に囲まれて、かなり奇妙なパーティを催しているんですから。 |
大佐 | Ho-ho, yes! | ほうほう、その通りだ。 |
夫人 | But take all that away and you, you have just wealthy, unattached, little me…searching, just like you. | でも、そういう虚飾をすべて取り払ってしまえば、貴方に見えるのは、ただ裕福で、寄る辺のない、寂しい私…私も落ち着く場所を求めているのよ、貴方と同じように。 |
最後の夫人の言葉は、かなり思い切った翻訳をしてみました(中あな流翻訳)。
でもおそらくは、夫人が言いたかったのはこうです。
「どんなに華やかなふりをしていても、本当は寂しい私の心を慰め、満たしてくれるのは、貴方なのよ」
この場面は、大佐が、夫人の顔を眺め、含み笑いをするような表情を残して終わります。
次回につづきます。
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