この「今日のひと言」シリーズでは、前回、英文をうまく書くコツは英米人の表現を参考にすることだと申しました。

わかりやすく言うと、うまく「パクる」ことだとも。(笑)

今回も、実際の文例を紹介したいと思います。

一緒に仕事をしている英国人から受け取ったメールの末尾に次の文章が刻まれていました。

(今回は、これを題材にして、参考になるところを解説したいと思います。)

Following government advice, our team is working remotely, with some also balancing childcare responsibilities. We are doing our very best to ensure business as usual, but you may experience a slower or more limited service. Apologies for any delays and please be patient during these unusual circumstances.

まずざっと読んでみて、とても模範になる英文だと感じます。さすが英国人、英語が上手いです。言いたいことをていねいに、かつ簡潔に伝えています。

ちょっと翻訳してみます。

1.まず第1文です。

Following government advice, our team is working remotely, with some also balancing childcare responsibilities.

政府の助言に従い、私たちのチームはリモートワーク(在宅勤務)をしており、その中には家庭で子供の世話と両立させている人もいます。

ここで注意しなければならないのは、government に冠詞(the とか a)が何も付いていない(無冠詞、つまり裸である)ことです。

日本人が書く場合には、まずほとんどと言って良いほど、the government advice としがちです(何を隠そう、筆者もそうです)。

それでは、なぜ、ここでは何も冠詞が付いていないのでしょうか。

ここからは、筆者の見解ですので、絶対に正しいという保証はありませんが、参考として読んでいただければと思います。

冠詞が何も付いてない理由を考えてみます。

  • まず、advice という名詞が、数えられない名詞(不可算名詞)であること。この場合、a や an の冠詞は付けられません
  • advice の意味は忠告や助言ですから、なんとなく数えられるような気がしますが、実際は数えられません。
  • ちなみに、advice の語源を探ると、「ad(=to~へ) + vice (見る)」という成り立ちからできている語です。vice は vision や visit と関係があります。つまり、語源からすると 「~へ訪問して見る」というような意味なのです。「先に行って見てみる」ことから、先回りして状況などを見て(~した方がよいとか、悪いとか)、わかるということから忠告する、助言するという意味になったことが想像できます。
  • 次に、定冠詞の the が付かない理由です。
  • 筆者は、場合によっては the を付けて、following the government advice とすることも間違いではないと思います。但し、その場合には、「その政府の勧告」というように、その advice が話者も、聴いている相手も、読者も特定のものであるとわかっているという条件を満たすことが必要です。
  • たとえば、政府が1つしかないために誰もが特定の政府を思い浮かべる場合です。こう言うと、英国政府は1つしかないのでないか、という疑問が生じます。それはそうですが、よく考えてみてください。地方政府だって立派な政府ですから、government は必ずしも1つではないのです。
  • もう1つ考えられるのは、その政府勧告の内容について誰もが知っていて、「例のあの勧告」というような感じで特定できるものである場合です。
  • 話を戻して、定冠詞の the が付かない理由としては、以上述べたことと逆のケースということになります。つまり、この場合、いろいろな政府勧告や助言などがすでに出ており、その中で「在宅勤務」も推奨されているので、ここでは政府の助言が特定されないものであり、したがって the が付かないと考えられます。

次の話題として、working remotely です。在宅勤務するという英語は、work from home あるいは work remotely などを使うのが一般的です。

日本で使われている、テレワーク telework は正式な英語ではないことに注意が必要です。(少なくとも英国人の友人はそう言っています。)

2.次に、2つめの文を見てみます。

We are doing our very best to ensure business as usual, but you may experience a slower or more limited service.

通常通りの業務を行うために最善を尽くしていますが、業務の提供が遅れたり、限られたりする可能性があります。

ここで覚えたら良い表現は you may experience ~ です。

これは、「あなたは(不都合なこと)を経験するかもしれません」と言っているわけですが、実際には、ご不便をおかけすることがあるかもしれません、と予防線を張っているのですね。

文の前半で、「ベストを尽くしますが」と言っておいて、この you may experice が続いているのを読んだ瞬間に、筆者には、この「不便なこと、不都合なこと」が、間違いなく、必ず起こると言うニュアンスに聞こえてきます。(笑)

3.3つめの文は最後の締めくくりです。

Apologies for any delays and please be patient during these unusual circumstances.

ご不便をおかけして申し訳ありませんが、この非常事態の間はどうかご辛抱ください。

Aplogies の前には、We make (apologies) とか We express (aplogies) が省略されていると考えればよいですが、このままの形で謝罪を表す文として使われることが多いようです。

今回は、リモートワークにまつわるお話でした。

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