7月15日(金)快晴
夜半に騒動があって、夜が明けた朝、洗面所とバスのお湯が出なくっていました。朝シャンをすることもなく(ふだんからしていないが)、そのまま大学に出勤しました。
お昼時には、同僚のエルちゃんに、幽霊が出たよなどとすこし話を盛っておどろかせたりしました。
定刻にオフィスを出て、部屋に戻り、旅行用の服装に着替え、ハイキングシューズを履いて、準備してあったリュックを担ぎ、部屋を出ました。地下に住んでいる大家にあいさつします。いやみの1つも言ってやろうかと思ったのでしたが、善良そうなお爺さんの顔を見ると、そうそう悪態をつくことなどできなくて、大家さんとこんな話を交わしました。
「今朝早く、ホントに驚いたけど、たいへんでしたね」
「いやあ、申し訳なかったね」
「まだお湯は出ないようですね」
「たしかに・・・。プラマー(配管工)が今日の午後に来たんだが、検査のみで帰っちまったんだ。月曜日に直すことになっているんだ。それまで、3階の空いているXX号室の浴室を使ってほしいんだよ。部屋の鍵を開けておくから」
「ニック(大家さんの名前)、ボクはこれから友人の家に泊まりに行って、あさっての日曜日の夜に帰ってくるつもりなんだ」
「そうかい。お湯が出なくって、そうしたのかね」
「いやいや、前から友人と約束していたんです。気にしなくっていいですよ。それじゃあ」
駅に向かいながら考えました。
「案の定お湯のパイプは直っていなかった。今日修理工はきたが検査のみで終わったって。直すのは月曜になると言う。でも、これは月曜だって本当に直るかわからないぞ・・・。これがイギリスだ。」
ユーストン駅で列車を待つ
すでに切符はネットで手配がしてありました。
ところがなかなかヒヤヒヤさせられます。電光掲示板のまえに多くの人が待っています。次々に発車する電車が表示され、アナウンスがなされますが、ボクが乗る列車は、いっこうに表示が出ません。
アナウンスを聞いていると、乗務員の乗り込みが遅れているために出発が遅れていると言っています。
「なんと言うことだ。そんなことが許されるの?」いらいらして待っている内に、急にアナウンスが入りました。
「おそらくこれだな」と身構えていると、出発する電車のプラットフォームの番号がアナウンスされました。
それと同時にいっせいに多くの人が大急ぎで改札に移動していきます。しかし、改札口ではなにもチェックがなく、そのまま皆がプラットホームに進んでいき、電車に乗り込んでいきます。
「ハーイ、テリー、申し訳ないのだけれど、電車の出発が遅れているんだ。おそらく30分くらい遅れそうだわ」と伝えると、友人は、
「オーケー、駅で待っているので、心配しなくていいよ」と動じることもありませんでした。
(あとで分かりましたが、公共交通機関が遅れるのはむしろ当たり前、日常茶飯事のことで英国人には慣れっこのことでした。このトラブルにはロンドンに戻るときにも見舞われました。それはまた後日談として)。
まもなく、電車は30分遅れでゆっくりと動き始めました。ようやく出発した電車の中で、到着が計算できて、安堵の気持ちをとりもどしました。
それにしても、こちらでは、耳で聞いて意味を捉えないと何が起こってるかわからない場合もあり(劇場でのボヤ騒ぎもありました)、トラブルに陥りかねないことが身に沁みてよくわかります。
こういうときに今ひとつ不安なときは、そばにいる英国人をつかまえて確認するようにします。なんといっても英国人は英語の聴き取りが得意ですからね。笑
本当に親切で素敵な人たちとの交遊、交流に恵まれていることに感謝、感激です。隣にお住まいのご夫婦も一緒に、庭の一角にしつらえられたパティオで食事と会話を楽しみました。外はまだ明るい(今の季節は、9時過ぎまでじゅうぶんに明るいのです)。
広大な牧場のような用地に家が建っています。パティオは友人の手造りだと言います。
さっそく食事をいただきます。ワインがおいしい。奥さんの手料理の鮭の照り焼きがこれまたおいしい。
おかげで、いろんな面で知ることができました。こういう体験は何ごとにも代えがたいものです。食後は、火を囲んでコーヒーを飲みながら、こんどばボクが中心になって話を披露します。
話題は、もちろんフラットでの深夜の幽霊騒動です。すでに大学のオフィスでも同僚たちに同じ話を披露しているので、段取りも慣れたものです。どこで驚かせ、笑わせるかの計算もできています。
「その幽霊、きっと家賃を払えって言ってきたんじゃないの」と言われてしまいました。
友人たちは田舎での生活を本当にエンジョイしています。
きっとこれが英国人の理想なんだと思います。
おかげで僕にとってはおいしい食事とお酒と、友人たちとの会話を心から楽しんだ一夜でした。会話が弾んで、英国に来てなんとなく英語が不自由なく出て来るようになっている気がします。
明日は朝が早い、5時に出発するという。シャワーを浴び、ベッドに入り、横になった途端に眠りに落ちていきました。
最近のコメント