次の日本文を英語にしてください。
◎飲んだら乗るな。
この問題はけっこう興味深いものがあります。大げさに言うと論理が問われるのです。
この問題に対して、太郎君は次のように訳しました。
太郎: Don’t drink or drive.
一方、花子さんは次の回答をしました。
花子: Don’t drink and drive.
さて、どちらが正しいでしょうか。わかりましたか?
さあ、答を言います。答は次です。
正解は花子さん
◎Don’t drink and drive.
なぜこうなるか考えてみましょう。
冒頭で論理が問われると言いましたが、花子さんの言っている not A and B は not (A+B) という形に置き換えて考えるとわかりやすい。カッコ内の A+B は「Aであると同時にB」という意味です。
一方で、日本語の「飲んだら乗るな」というのは「飲んだ状態であると同時に乗ること」を意味しています。つまり、(飲んだ+乗る)ということであり、先ほどのA+B と同じになります。したがって、「飲んだら乗るな」を英語にすると Don’t drink and drive. になるわけです。
これは、「飲むことと乗ることを同時にやってはいけない」と言っているのであって、「飲むこと」と「乗ること」それぞれを別々にやることまでを否定していません。つまり「飲むこと」単独の行為と「乗ること」単独の行為は別個にやってよいのです。
それでは、次に太郎の Don’t drink or drive. の意味を考えてみます。
これは、「飲んではいけない。(また)運転することもいけない」ということです。このカッコでくくった(また)が曲者です。この(また)は二者択一でなく、両方の場合も含んでいるのです。したがって和訳するときは(また)を書かない方がよいでしょう。つまり、飲むことと運転することをそれぞれ単独でやってもいけないし、当然ながら(ここが重要ですが)、飲んで運転することもいけない、という意味になります。and との違いをよく理解しておくことが大切です。
最後におさらいの問題を出します。つぎの英文は英語のことわざです。意味を考えてみてください。上記の 「and の場合」に関連しますよ。
◎You can’t have your cake and eat it.
この英文の意味を考えるときに次のように因数分解してみます。
You can’t x (A + B) つまり、You can’t (have your cake + eat it). と分解して考えます。
はい、答を言います。
◎ケーキを持つことと食べることは同時にできない=「ケーキを食べたら、なくなる。」
つまり、これは「矛盾することは同時にやることができない」ということわざなのです。
最後に説明された、You can’t have your cake & eat it. は、私にはちょっと難解です。けーきを持って、食べることはできるのでは?と思ってしまいます。持って食べることができる、当然、食べたらなくなる。矛盾?と言われても、矛盾だろうかとつい考えてしまいました。
なるほど、ちょっとわかりづらいかもしれませんね。それでは have を keep に変えたらどうでしょうか。ここでのポイントは not A and B という表現が、A と B が同時に起こることを否定していることです。ここで have が意味しているのは一時的に手で持つのでなく、「保有している状態が続く」ことです。貴方がイメージしているのは、手に持ちながら食べるということですが、そうではなくて、ここで表現しているのは「保有することと食べてしまうことを同時に両立すること」であり、それは不可能だと言っているのです。
とても、とても遅いコメントですが、なるほど。山根さんの説明に納得です。