知り合いが次のようなことを言っていました。

『20年間海外に住んでいる息子に「昨日は会社に行かなかったの」と尋ねたときのことです。「いいや、行かなかった」と言って、同時に首を横に振りました。』

『日本にいたときはこういうときに、首を縦に振って「うん、行かなかった」と言っていたと思う。』

これを例にすると、日本語では、否定疑問文で訊かれたとき、一般的に次のようになります。

問 昨日は会社に行かなかったの?


1.(行かなかった場合)はい、行きませんでした。
2.(会社に行った場合)いいえ、行きました。

これに対して英語では、否定疑問文に対する答え方は次のようになります。

問  Didn’t you go to office yesterday?


1.(行かなかった場合)No, I didn’t.
2.(会社に行った場合)Yes, I did.

日本語と英語では否定疑問文に対する「はい」と「いいえ」が反対になっていることが分かります。

なぜでしょうか。まず日本語は、相手に合わせて、相手の訊いていること、あるいは考えていること(この場合は、「会社に行かなかった」のでないかという思いや質問)に対して、「はい、そうなんです」とまず反応してから「行きませんでした」と答えているのが日本語の1で、その逆が2になっています。つまり相手に合わせて、いいえ、はいの答え方をしています。

それに対し、英語では yes, no は絶対的なもので、相手の訊き方が否定疑問文であろうが、肯定の疑問文であろうが、yes と no が変わることがありません。

これをよく注意しておかないと、日本語でのくせが抜けずに、No と言うべきところを Yes と答えてしまうことになりかねません。日常での会話なら笑い話で済みますが、契約などの交渉で間違えたらたいへんです。

このような間違いを犯さないためにはどうしたらよいでしょうか。筆者が実践していることがあります。

それは、相手方の尋ねている事象に対して、自分が反対の気持ちのときは、首を横に振ってから(あるいは振りながら)No と言うことです。逆に賛成のときには、Yes と言って、うなずきます。この首をふる動作が自分の気持ちを表し、それを言葉につなげることに役立ちます。

さあ、試してみましょう。

次の質問が投げかけられました。

Don’t you like that guy?  (あいつのこと好きじゃないのか?)

1.(嫌いなら)No, I don’t.  (と言って、首を横に振る)
2.(好きなら)Yes, I like him. (と言って、首を縦に振る)

冒頭の例で、息子さんは長年の海外生活でこの習慣が身についていたのでしょう。さあ、この首振りをしながら、No と Yes を答えるやり方をトライしてみてください。決して間違えないようになります。

 

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