さて、今回は know という英語と「知る」という日本語の話です。これはイコールでしょうか。

最近の政治のお話で、安倍首相が「家計学園が申請したのを知ったのはいつか」との野党質問に答えて「2017年1月20日」と言ったのに対して、野党もマスコミもそんなはずはない、もっと前から知っていたはずだと大騒ぎをしました。なぜこんなことになるのでしょう。僕は「知る」という日本語の意味を正しく捉えていないから、認識がすれ違っているのだと思うのです。(それにしても日本人は、ディベートが下手です。閑話休題、それはさておき。)

それでは、次の日本語を英語にしてみてください。
「私はそのソフトウエアの使い方を知りたい」

ずばり答えを言います。

I want to learn how to use this software.

どうですか。「知る」→ know と反射的に結びつけていませんか。実は、日本語の「知る」には、次のような様々な状況で使われる用法があります。

1.物事の存在・発生などを確かにそうだと認める。認識する。「おのれの非を知る」「ニュースで事件を知った」

2.気づく。感じとる。「昨夜の地震は知らなかった」「知らずに通り過ぎる」

3.物事の状態・内容・価値などを理解する。把握する。さとる。「物のよしあしを知っている」「世界の人口はどのくらいか知っていますか」

4.忘れずに覚えている。記憶する。また、物事に通じている。「昔を知っている人」「内部の事情をよく知っている者の犯行らしい」

5.経験する。体験して身につける。「酒の味を知る」「世の中の苦労を知らない」

6.学んで、また、慣れて覚える。「フランス語なら、少し知っている」

7.付き合いがある。知り合いである。面識がある。「知っている人に会う」「知った顔ばかり」

8.(多く、打消しや反語を伴って用いる)そのことにかかわって責任を持つ。関知する。「私の知ったことではない」

一方で、know という言葉は、英英辞書を引くと次のような説明がされています。

1. be aware of through observation, inquiry, or information.
2. be familiar or friendly with

つまり、「観察や調査や情報によって承知している」「~に通じている」ということであり、「知っている」という状態を示すことが分かります。従い、日本語の「知る」という言葉の一部を表すとしても、状況によって使われる「知る」を直ちに know で英訳してはいけない場合が少なくありません。

例題の「ソフトウエアの使い方を知る」の「知る」は know という状態を表す動詞ではなくて、「知る」を「学ぶ」に置き換えることによって、 learn で表すのが適切であることがおわかりいただけると思います。

それでは、know を使って、「知るようになる」という動きを表すにはどうしたらよいでしょうか。それは、come to know とか get to know と言えば良いのです。次のような言い方です。

I came to know how to cook. 料理の仕方を知るようになった。

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