英単語の inform について考察します。

筆者が会社勤めを始めた時代、英文タイプライターでせっせと手紙を書いていたときに、ほとんど毎回と言ってよいほどこの単語を使っていました。(ちなみにワープロもパソコンもない時代でした。)

レターでは、こんな風に inform を使っていました。

We are pleased to inform you that we have decided to accept your offer.
あなたのオファーを受諾した旨、決定したことをお伝えします。

悪いことを伝えたいときは、次のパターンです。

We regret to inform you that ~

(残念ながら、~をお伝えします)

もう1つのパターンは、次の文例です。

I inform you of our decision to have accepted your offer.

これは、前の例文と同じ意味ですが、前の例文が that 節を使うのに対して、

inform +人称代名詞 + of + ~ (~には目的語が入る=文例では our decision)

という語順で、人称代名詞と目的語の間に of を入れるところに特徴があります。

(閑話休題)

今日の本題は、ここからです。

翻訳者も知らない inform の特別な意味とは一体何でしょうか。

次の英文が、今回のテーマに関連しています。ちょっと難しいですが、動詞の inform の意味を考えながら、どんなことを言っているか考えてみて下さい。

This information will provide a better understanding of the development of periodontal diseases and inform the strategy for the identification of therapeutic approaches for these conditions.

・periodontal diseases  歯周病
・therapeutic approaches  治療法
・conditions  疾患

初めの文(and の前まで)は、次のような意味です。

この情報は、歯周病の発症についての理解を深める。

and 以降は、どうなるでしょうか。

そして、これらの疾患に対する治療法を特定するための戦略に(    )。

さあ、(    )内に、inform の訳語が入ります。それは、何でしょうか。

その答えは、







はい、答えを言いますよ。

 

答えは、(役に立つ)でした。

実は、inform はほとんどの場合、人称代名詞と結びついて、「(誰々に)~を知らせる」という意味で使われます。

ビジネス英語では、もう100%近くがその用法で使われると言っても過言ではないでしょう。

しかし、上記の問題例文で使われているように、inform の目的語に人称代名詞がなくて、事象を表す名詞(例文では the strategy)が使われることがあるのです。

そのような場合には、「~の役に立つ」「~の検討材料になる」という意味になることが多いのです。

参考までに他の文例を挙げておきます。(翻訳は筆者の参考例)

To further inform this discussion, it is vital to know when the fault slip occurred.
(この議論を深めるためには、フォールト・スリップ=断層滑りがいつ発生したのかを知ることが不可欠です。)

Although qualitative work may inform this discussion, these hypotheses require testing in future research.
(質的な研究がこの議論に役立つかもしれませんが、これらの仮説は、今後の研究で検証する必要があります。)

Community members move in setting the agenda and inform the strategy for seeking social change.
(コミュニティのメンバーは、アジェンダを設定し、社会的変化を求めるための戦略に影響を与えます。)

This will be a critical scientific step in understanding transition from risk syndrome to full-blown disorder, and will also inform the strategy for planning and implementation of successful programmes of early intervention for individuals with emerging BD. bipolar disorders.
(これは、リスク症候群から本格的な障害への移行を理解するための重要な科学的ステップであり、また、双極性障害の発症者に対する早期介入プログラムの計画と実施を成功させるための戦略にもつながるものである。)

ちなみに筆者は、翻訳の仕事もしています。この inform 「役に立つ」は、多くの翻訳者がご存じなかったという訳語なのです。

今回は、inform にあまり知られていない意味があるというお話でした。

 

 

90+