次の記述は、ウェブサイトから拾った「進研ゼミ高校講座」での英語の時制に関する解説です。

〈時制〉
時制とは、「現在、過去」というような「時」を表すために
動詞の形を変えることを意味します。
基本となる時制は「現在、過去、未来」の3つですが、
「完了形」「進行形」との組み合わせもそれぞれ時制です。

残念ながら、これは間違っています。ベネッセコーポレーションという一流企業が、このように間違った教えを堂々と載せているのは困ったものです。中学、高校生諸君に間違いを覚えさせることになります。

では、なぜ間違っているのでしょうか。

それには、まず「時制」が何を意味しているかを正確に理解することが大切です。

「時制」とは、ある動作や状態が、話を発したときよりも前か後か、それとも同時かという時間的関係を、動詞の形式によって表す文法的な意味合いのことです。

たとえば、日本語では、「食べる」のル形は、現在時制であり、「食べた」のタ形は、過去時制となっています。

一方、過去、現在、未来という時の概念は、人間が持つ一般的な概念です。文法とか言語とは直接関係ありません。

この「時」の概念と、言語の「時制」を、きちんと区別することが、英語の時制を考える場合に非常に重要です。

筆者が思うに、時制とは、簡単に言えば、動詞の形が変化することによって、話したときにそれが現在のことなのか、過去のことなのか、それとも未来のことなのかを表す文法用語ということになります。

英語の場合、時制は、次のような動詞変化で表されます。

work   →  worked
(現在形)  (過去形)

冒頭の進研ゼミ高校講座では、「基本となる時制は「現在、過去、未来」の3つ」と言っていますが、これは間違いだと言いました。

なぜ間違っているのでしょうか。





答を言います。

英語では、work が現在形で、 worked が過去形です。しかし、work に未来形(=work を変化させて、未来を表すというやり方)がありますか。ないですよね。

改めて言うと、英語の動詞には未来形はありません。英語には、現在時制と過去時制の2つしかありません。

でも、こう言うと、いやいや will work があるじゃないかという人がいます。

しかし、will work を未来時制とはみなさない理由が2つあります。

  1. will + work(動詞原形)は、時制的にはあくまでも現在時制であるという理由が1つ目です。たとえば、He will work tomorrow. は、話をしている現在において、彼が明日働くことを保証しているにすぎません。
  2. 次に will という助動詞を、時制を表す形式要素と見なすには、will が持つ辞書的な意味がたくさんありすぎるというのが2つ目の理由です。will には、たとえば意志、習性、推量、勧誘などを表す、助動詞としてのさまざまな働きがあります。未来は、will が持つ意味の1つにすぎません。

改めて言います。英語には、現在時制と過去時制の2つしかありません。未来については、あくまでも現在において未来のことを表現しているにすぎません。

翻って考えると、英語で未来表現をするときには、どういう言い方をするのが、適切かを考えることが重要になります。つまり、英語での表現の幅を広げるためにも、未来表現の場合には、どういう形式を使うのか、引き出しを持っておいて、適切に使うことが必要と言うことです。

それでは、未来を表す表現の形式にはどんなものがあるかを、次にまとめておきます。

  1. will + 動詞原形  I will see you next month. (来月お目にかかりましょう) これの変化形として、will + be + ~ing があります。Will you be using this laptop this afternoon? (このノートパソコンを午後に使いますか)
  2. be going to + 動詞原形    I’m going to play golf tomorrow. (明日ゴルフするつもりです)
  3. 現在進行形  We are visiting Paris next summer. (来年の夏パリに行く予定です) (予定が確定している場合)
  4. be + to不定詞  The U.S. President is to visit Japan next month. (米国大統領は来月訪日する)
  5. 現在時制 Christmas falls on Saturday this year.  (今年のクリスマスは土曜日に当たる)
  6. be about to + 動詞原形  The movie is about to start.  (その映画はこれから始まります)

おさらいになりますが、未来表現は、現在時制で未来のことを表すものです。したがって、どういう表現が、言おうとする状態や動作にもっとも適切かを考えて、上記の1から6の中から選ぶことになります。(厳密にはもっと選択肢はあるかもしれませんが、ほとんどは上記でカバーできていると思います。)

*なお、will に関しては、過去の投稿も参考になると思います。

 

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