次の英文を日本語にしてください。

The people of the country are guaranteed security from cradle to grave

この英文の意味は次の通りです。
その国ではゆりかごから墓場まで(from cradle to grave)生活が保障されている。

 

from cradle to grave は「ゆりかごから墓場まで」、つまり「生まれてから死ぬまで」、「一生涯」を意味する決まり文句です。

元々、このフレーズは、第二次世界大戦後に英国労働党によって社会福祉政策のスローガンとして掲げられたものでした。英国の社会福祉サービスは、国民全員が無料で医療サービスを受けられる国民保健サービス(NHS)と国民全員が加入する国民保険(NIS)を根幹としています。しかしながら、やがて「ゆりかごから墓場まで」政策は財政を圧迫する主因として糾弾されることになります。

いわゆる「英国病」に由来する税収の伸び悩みにより、NHSの財政圧迫が深刻な問題になりました。このため「小さな政府」を目指す、イギリス保守党のマーガレット・サッチャー政権下(1979-1990)で同方針の転換が図られ、大胆な福祉支出の削減が行われたのでした。

ところで、from cradle to grave を見て、なにかおかしいと思いませんか。

そうです。名詞の cradle にも grave にも冠詞がついていません。本来どちらの語も数えられる名詞ですから、a がついてしかるべきです。

それはなぜでしょうか。

はい、その答は次の通りです。↓



a をつけないことにより、cradle は「生まれたとき」を、grave は「死ぬとき」を抽象的に表しているのです。

逆に a をつけてしまうと「或るゆりかごから或る墓場まで」という物質(物体)の間を行くとか、来るなどの空間の移動を表すことになってしまいます。あくまでも「生まれてから死ぬまで」という抽象化した概念をあらわすために a という冠詞をつけないのです。

これに似た表現に from dawn to dusk があります。dawn は「夜明け」、dusk は「夕暮れ」ですが、これも a をつけないことで、「太陽が出ている日中」、「白日の下で」といった抽象的な意味を持たせることができます。

 

14+